Do you remember? 制作記(3)アレンジのお話

Bettyさんからのアレンジの要望は、以下のようなものだった。

・ネオソウルテイスト

・ギターのオブリガートをたくさん入れたい

・間奏でソロを入れたい

・浮遊感、切なさを表現したい

そのほかにも細かいところはあったが、大まかな方向性はこんな感じ。

なるほど、これはいわゆる普通の作曲作業をしなきゃいけないってことか。これまで主にサンプリングの切り貼りでもって感覚だけで曲を作ってきた俺にとっては、なかなかのチャレンジ。

 

まずは、ネオソウルっぽいコードをお勉強(←そこからか)。そして探り探りでコード進行を完成させていった。我ながらソウルフルかつジャジーでかっこいい進行ができたと思ったんだが、やはり一発OKとはならず。半分くらいは採用、半分はBettyさんが自分である程度ざっくりした進行を作るから、それをもとに再考してほしいとのこと。

 

え?そっちで原案あるなら先にくれよ!と一瞬思ったが、どうやらそうではないらしい。彼女はゼロから作るのではなく、ある程度のものを聴いて、そこからイメージを膨らませていくタイプとのこと。まあ、それはそれでわかる。俺もそうだし。ついていこう。

 

当初はかなり暗めで、あえてポップな盛り上がりを設けない、淡々としたコード進行だったんだけど、先方が送ってきたものは、意外にもポップで分かりやすい展開を持ったものだった。

 

あー、そっち?なるほどね、表現したい世界観は分かった。ただ、俺が作ったものと融合させると明らかに違和感がある。

 

そんなわけで、先方のコードにテンションをつけたり代理コードに置き換えてみたりと、これまた探り探りで調整。その後、何度もやり取りをして、ようやく完成形に持っていくことができたのだった。

 

和声とか俺の音楽理論に関するスキルが低いこともあって、ここは最も時間がかかってしまったなあ。

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次は楽器の構成やら音色やらを考える段階。一般的にイメージされるアレンジらしいアレンジを作る工程だ。ここはそれほど迷わなかった。先に作ったremixの時点で大体の方向性は決まっていたからだ。コード感を前面に出しつつ、浮遊感のあるアレンジ。なおかつ、ちょっとだけハズシの要素があって古臭く感じさせないように。

 

これらを表現するためにドラムはTRAPのやや変則的な打ち込み、そしてベースは打ち込みで、キックを加工した低いルート音を単音でドーンと鳴らすアレンジにする決断をした。実は最近のR&Bってベースが入ってない曲が多いのね。まあTRAPの影響だけど。TR808というリズムマシンのキックを加工したものをベースの代わりにする感じ。それをやりたかった。

 

しかし、ここは揉めに揉めましたね。罵りあいと掴み合いの喧嘩で血みどろの争いになりました(一部フィクションです)。

 

ボスはどちらかというと70年代っぽいバンドサウンドをイメージしていたみたいなので、生ベースにこだわっていたのね。一方で俺は最近のR&B的なTRAP風アレンジを想定していた。だから、ここで生ベースにしちゃうと、それらが全部崩れちゃう。生ベースのアレンジに合わせて一から作り直さなきゃいけない。

 

コラボに限らず制作全般で言えることなんだけど、ある程度の方向性というかビジョンがあって作り込んでいったものに対して、急ハンドルを切って途中で何か一部のパーツだけ変えるというのは非常によろしくない。大抵、芯がブレてくるので、結局何がしたいんだかわからないものになってしまうのだ。

 

そして、ゴールが曖昧になると、今度はとかく「〇〇を××してみたらどうだろう?」と思い付きでいろいろ試しがちになる。特に今回のベースのように曲の根幹に関わる部分であるほど余計に迷走することになるのだ。完成に至るまでの(合意形成された)イメージがあった上での変更であれば上手くいくこともある。しかし、互いの完成形のイメージをきっちり擦りあわせられていない状態で、あれはどう?これはどう?といろいろ手を出すのは悪手と言わざるを得ない。

 

なので、コラボの場合はそれに陥らないためにも最初の段階でコンセンサスを取っておくことはとても大切なのだ。今回は手探りだったこともあって、そこを怠ってしまったのは大きな反省点。

 

で、今回に関しては、全体の方向性と生ベースにした場合のデメリットなどをきっちり説明して、なんとか俺の案で納得してもらった。ふぅ…

 

次はギターのオブリガートとソロだ。そして、ここでまた事件が…!

 

(続く)