Do you remember? 制作記(2)ボスを決めよう
最初は、Gingerらしさが欲しいわけだから、とにかく好きにアレンジしてくれと言われたので、素直にその通りにした。
あくまで自分の感覚とセンスにのみ従って俺が選んだのはダブ。歌を途中でちょん切ってディレイで飛ばす。以前より得意としている手法だ。
しかし、Bettyさんはあまりいい反応をしなかった。当然と言えば当然、彼女はシンガーであり、自分の歌や歌詞を聴かせるために俺にアレンジを依頼しているのに、歌も歌詞もちょん切られてはたまったものではないよね。
正直、この時点では歌詞の内容なども全く考慮せず、歌もただの楽器、サンプリングネタの一つとして扱うくらいのスタンスだった。しかし、彼女の歌に対する情熱とこだわりを聞いて考えが変わる。
なるほど、そこまでこだわりがあるなら話は別だ。俺に丸投げしてあとはヨロシク!というやり方ではないことはよく理解できた。
こういう場合、まず最初にコラボのやり方自体を定める必要がある。これまでもお遊び含めて何人かとコラボをしてきたけど、結局一番大事なのは誰がボスか、というところ。最終的な決定権はどちらにあって、ぶつかった時にどっちが折れるかを決めておかないといけない。
その結果、今回はあくまで先方がボス、こちらはそれぞれの段階でボスの要望を聞いて「こんな感じでどう?」と提案をしながら進める形を採択した。当然ながら、これは時間かかるし、舵取りを担当する人にきっちりしたビジョンがないと方向性に迷いも生じやすいというデメリットはある。他方では客観的にダメ出ししてもらえることで細部まで追い込むことができるメリットもある。
で、そんな話をしている中で、せっかくだから最初に作ったのも生かそうかという流れに。じゃあ、あっちはremixって形にしようか?と。ちなみにremixは俺が主導で、Bettyさんは最低限しか口出ししないという取り決め。
そんなわけで、先にremixが出来上がってしまうという珍しい事態に。
さらに、どうせなら本チャンの音源と同時リリースにしようよという話に発展。本チャン(という言い方が適切かわからないけど)の名義は「Betty feat. Ginger does'em all」、一方remixのほうは「Ginger does'em all feat. Betty」と、対の存在として2バージョン楽しめる趣向にした。
とりあえず、remixのほうは相談もほとんど必要ないのでサクっとできた。Bettyさんのある種独特な唱法からエスニックな雰囲気を感じ取って、シタールをフィーチュアしたりして、我ながらなかなか面白いトラックになったと思う。
さて、問題はここから始まる本チャンのアレンジ。よもやここまで頭を悩ませることになろうとは…
(続く)