再々入院記2

再再入院記(不安編)

手術直前の3日間。内容は不安との対峙が中心です。

#11/25(火)

昨夜は床につくべく横になると同時に激痛。一体これはなんだ。ひとまず起きると平気。少し腕のストレッチをしたらマシになり、そのまま眠りについたが、朝はやはり痛かった。

昼食後に主治医へ開胸の意志を伝える。いよいよだ。もう後には退けない。同時に強くうずまきはじめる不安感。

午後から夜までリモートでひたすら仕事。むしろ手術への不安を払拭させる意味では仕事に没頭できてよかったのかもしれない。

夕食後、会社の同僚がアポなしで訪れる。またしてもお菓子。コージーコーナーのパウンド詰め合わせ。絶対に結託して俺を激太りさせようとしてるんだろ。そうに決まっている。ありがとう。


#11/26(水)

痛みで朝5時に目が覚める。痛み止めを服用し、しばし耐える。どうも今回は横になると痛くなる傾向にあるようだ。挿管の角度などの問題だろうか。寝るのがつらい。

午前中は仕事、シャワー。昼食後に洗濯。

午後に看護婦から手術までの手順と術後について簡単な説明を受ける。

時間が迫るにつれて不安は増していく。手術という未経験のイベントに対して抱く漠然とした不安感。しかし具体的に何が怖いのか。ただ嫌だ嫌だと思っていても何も良い方向には転がらない。このような場合、まずは自身の感情を分析し、問題を細分化してみることが大切だ。

不安要因を列記してみると、大きく4つほど考えられる。1、手術の失敗への恐怖。2、血液製剤を使うことへの抵抗感。3、未経験の全身麻酔に対する不安。4、術後に襲うであろう経験したことのない痛み。おおよそこんなところだろうか。

まず手術の失敗。これはあまり考えていない。もちろん、ありえない話ではないがそれほど危険性の高い手術ではないはずだ。失敗したとしても死ぬことはない。よし、除外。

次、血液製剤のリスク。確かに一昔前は薬害訴訟で知られるように肝炎などへの感染リスクがあった。しかし、今回使用するものは加熱製剤であり、感染リスクをゼロと言い切ることはできないまでも極めてそれに近い可能性だという。いうなれば、そこを心配することは、手術中に長島茂雄が手術室に侵入して妨害工作するのを心配するのと同じようなものであり、それはもはや違う病気である。これも除外。

そうなると、全身麻酔?うん、この不安は確かにある。自分の意志が一切及ばなくなることへの恐怖感。気を失わされ、その間、カラダを他人に好き放題されてしまう。ちんちんの皮をひっぱって遊ばれたとしても、こちらでは全くどうしようもないのだ。結局は睡眠と同じだよ、といわれることもあるがそれは違う。睡眠の場合は何かあれば覚醒できるが、麻酔下ではその覚醒さえも他人のコントロールに委ねられてしまうのだから、やはり恐ろしい。

そして、術後の痛み。やはりこれが不安要因としては一番大きいか。ただ漠然と「術後は痛い、辛い」という情報ばかりを聞く。どのくらい痛いのか。それが分からないから、ことさら恐ろしいのだ。看護婦や医師に聞いたところで、人それぞれといわれて終わる。なんの参考にもなりゃしない。

そういえば、合併症や足腰が弱るのを防ぐために、手術翌日から早速立って歩かされるという話を看護婦からされた(→早期離床)。過去3回トロッカーを挿した経験からすると、挿管当夜は毎回、トイレに行くことでさえ相当厳しいほどの痛みを伴っている。術後、痛いながらも歩くことができるというのは、このトロッカーのときと同等かそれ以下ということではないか?うん、あの程度ならなんとかなる。いや、そりゃキツイですよ。でも未知数であることに比べたら全然マシだ。この関係に気づいた途端に随分と気分は楽になった。

そして、この日の夜、家人からの一言がさらに不安を軽減してくれた。いや、凝り固まっていた視点を一気に転換させられたと言うべきか。その一言とは「うちの猫はみんな避妊手術してるんだぜ?あの甘えん坊のゴマでさえ腹をバックリ切ってるんだよ」というものだった。これは思いもよらぬ考え方であり、目が覚めた。暗く狭い視界がパっと広がったようだった。俺は何をクネクネ悩んでいたんだ。歴代の猫どもが通ってきた道で俺が立ち止まってどうする。バカバカしいったらないね。ウジウジするのはもう、やめだ。


#11/27(木)

不安はある程度払拭できたのか、それなりに眠ることができた。

午前中にワキを剃毛。開胸の際はちょうど腋から下にかけて切るので、周辺の体毛は剃るのである。看護婦がバリカンを持ってくると、俺は上半身裸になりベッドに横になり右腕を上げる。看護婦が手に持ったバリカンにスイッチが入ると、妙な臭いが漂い始めた。我慢できないほどではないが、充分に不快だ。看護婦はそれに気づいているのかいないのか、全く気にするそぶりもなく一通りの処理が終わる。

次に細かい毛を流すために一人で浴室に向かう。先ほどのバリカンの妙な臭いがこの脱衣所でもそこはかとなくする。この病院で使う薬品か何かの臭いだろうか。しかし、ここでハタと気がつく。イエス俺のワキ。そういえば、先週金曜日に入院して以来、右ワキは一切洗ってない。(トロッカー挿管の痛みで右腕をあげることさえままならないのだから仕方ないのだが)

ああ、俺か。バリカンじゃなくて俺か。看護婦さんは普通にニコニコしてたけど、心の中では「こいつワキくっせえ」と思っていたに違いない。チクショウ、屈辱だ。

15時過ぎに父親が来院。手術の看護婦や麻酔科医から明日の手術について説明を受け、全身麻酔の同意書にサインをする。18時になり、今度は主治医から1時間ほど詳細な説明および書類へのサインなど。俺は終始冷静でいることができた。不安というものは理屈ひとつでどうにでもなるんだな。明日はせいぜい入院記のネタを仕込むつもりで楽しんでやろう。強がり?ああ、そうかもしれないが、俺は勝ちに行ってるんだ。そのくらいの気持ちじゃなきゃ負けてしまうからな。


再再入院記(手術編)

今回はいよいよ手術編。

#11/28(金)

手術当日。緊張しているのは間違いないが、それなりに眠れたのでよしとする。

当初14時半開始予定が1時間半早まり13時からになることを看護士から告げられる。早まる分にはいい。さっさとやってくれ。

正午過ぎ、ぶかぶかの手術着に着替え、血栓防止のためのきついストッキングを履かされる。移動用のストレッチャーベッドに横たわり術前の緊張をほぐすための鎮静剤を注射。少しうとうとしたと思ったらあっという間に1時間が経過していた。恐るべし鎮静剤。この時点では、もはや不安や緊張はほとんど感じていなかった。なるようになるだろうという達観の境地。

13時、そのままストレッチャーで手術室へと移動する。目に映るのは移動する天井と、複数の看護士や父親の顔だけ。映画やドラマでよく見る光景に似ている。

だだ広い手術室に到着すると隣室からだろうか、エルトン・ジョンの"Goodbye Yellow Brick Road"が控えめな音量で聞こえてくる。医師の趣味か、患者をリラックスさせるためか。どちらでもいいが、せっかくだからこの間接的に耳に届く音楽に気持ちを委ねることにしよう。

ほどなく背中を丸めるよう指示され、脊髄に細い麻酔針が挿入される。硬膜外麻酔だ。その作業が終わるや「酸素ですからねー、深く吸ってください」と口にマスクをあてがわれる。素直にその気体を2呼吸ほどすると意識が遠のく。ああ、なんだよ全身麻酔じゃねえか、だましやがっ…


「終わりましたよ」看護士の声で目を覚ますと、再び映画やドラマのあの光景。ベッドごと病室へ移動している途中だった。この時点で4時間半が経過していた。思いのほか手間のかかる手術になったらしいが、当然何も覚えていない。まさにタイムトリップ。目覚めた直後、気管に入っていた全身麻酔用のラリンゲルマスクを引っこ抜かれた気がするが、これもよく覚えていない。

病室へ戻った後はとにかく寒く、震えが止まらなかった。術中は体温を下げる措置をするため仕方ないことらしい。電気毛布をかけてもらい、しばし耐える。震えも落ち着いたころに主治医が一通りの説明をしにやってくる。思っていたよりもブラが多く難儀したとのこと。当初2〜3個だと思っていたブラが、なんと小さいものも含めて10箇所以上もあったらしい。具体的な数字は覚えていないが、3-4箇所は切除、2-3箇所を結紮(けっさつ)、残りの小さいもの6-7箇所は膜で補強。とにかく予想だにしなかった多さにぞっとしたようなほっとしたような。

その後は痛みもさることながら、吐き気との戦いであった。麻酔の副作用なのか、空腹のせいなのか。痛みより吐き気のほうが辛いといっていた人がいたが、本当にそのとおりだ。もちろん、痛みも同時にあるんだけどね。

22時ごろだろうか、突然こみ上げてくるものが。止めようと思う間もなく勢いよく逆流。しかし、すんでのところでベッドを汚すには至らず、苦い液体を口の中いっぱいにためたままナースコール。胃液と胆汁が溜まっていたようだが、このおかげで吐き気はだいぶ治まる。

しかし、それは一時的なものでしかなかった。1時間ほどすると再び吐き気。吐こう、吐けば楽になると思ったが、今度は全く出てこない。苦しさMAXなので再びナースコール。吐き気止めを点滴してもらう。これで随分楽になり、少しだけウトウトすることができた。

痛みに関して、特に開胸した傷口は驚くほど痛くなかった。過去3回のトロッカー挿管と同等かそれ以下か。その代わり肩と背中に重い激痛。これには参った。ずっと片手を上げた状態で手術をしていたためか、手術でいろいろ切り刻まれた為かはわからないが。

また、股間には噂の尿カテーテルが挿入されている。つねにむずむずして尿意を感じる。ときどきウトウトとしたときが危ない。男子たるもの眠いときには、なぜか海綿体が充血するものなのだ。異変を感じると同時に目を覚まし、制御しようと努力するものの、こういったことは自分の意思ではどうにもならない。変化と共に刻一刻と迫る未曾有の感覚。もはやあきらめるしかない。痛いのかな。怖いよう。もしかして、痛みでどうしようもなくなり、ギンギンの状態で看護婦に助けを請うことになるのだろうか。それだけは勘弁してくれ!

しかし、結果的に違和感は大きかったものの、ほとんど痛みはなかった。よかった。本当によかった。ただ、刺激が刺激を呼んでちっともおさまらないのには困ったが。

そんなこんなでろくに眠れないまま朝チュン


#11/29(土)

朝になると痛みも吐き気も随分と落ち着く。朝一でレントゲン。車椅子にのせていってもらうが、このときにはもう立ち上がることができた。早いものだ。これも医療技術の進歩のおかげだろうか。持続的に注入している硬膜外麻酔が大きな効果を発揮していることは間違いない。

レントゲンから戻り、早速尿カテーテルのアンインストールを行う。噂には相当痛いと聞いていたがどんなもんか。「息を吸ってー吐いてー吸ってー吐いてーはい抜きます!」ずるずるずるっ。確かにそれなりには痛かったが、正直言って大したことはなかった。今や俺はこれよりも痛い経験など何度もしてきている。そういうことなんだろう。

ちなみに、処置してくれた看護士は若い男性だった。いまさらちんちんの一つや二つ、女性看護士にみられたところでどうということはないが、それでもやはり男性のほうが余計な気を使わなくて済むのでいい。とりあえず、この時点では勃起してなくて本当に良かった。

昼、待ちに待った食事。なんと42時間ぶり。プチ断食どころの騒ぎじゃねえよ。しかし配膳された昼食のメニューを見て非常に嫌な予感がした。おかゆにカレイの煮付け、サトイモの煮物。ここの煮物系は確実に味が薄いことをこれまでの経験で知っている。恐る恐るカレイを口に運ぶと案の定である。ほとんど味がなく、魚の生臭さだけが残る。最悪である。これで味のないおかゆを食えというんだから…久しぶりの食事を心から楽しみにしていただけに、心底がっかりさせられた。病院食とはいえ、普段はそれなりの味なんだが、こういうときに限ってこれだもの。

その後は容態も落ち着いたので、夜眠れなかった分うたた寝を繰り返す。

#11/30(日)

昨日時点では痛みに対してタカをくくっていたが甘かった。夜中の2時過ぎに強烈な痛みに襲われ目が覚める、ロキソニンを飲もうと思ったが体を起こすこともできない。仕方なくナースコールで座薬を入れてもらう。もうこれは黄金パターンですね。座薬のあとは痛みが引き、1時間に一回くらい目が覚めるもののなんとか軽い睡眠をとることはできた。

午前中にシャンプー&清拭。やけに体がかゆい。乾燥肌だろうか、それとも麻酔が切れ掛かって感覚が戻りつつあるのだろうか。また、のどが痛く、食事を飲み込むのが辛い。恐らく全身麻酔時のラリンゲルマスクによってのどに傷がついたのだろう。

午後、点滴が一本なくなった。スパゲティのように何本も体中に絡み付いていた管が、こうして一つずつなくなっていくのは、目に見える形での回復を象徴しているようで嬉しいものだ。


再再入院記(退院編)

ラストです。長文にお付き合いいただきましてありがとうございました。最後にオマケがあります。

#12/1(月)

痛みはなかったが、あまり眠れなかった。昨日昼寝をしたせいか。

今日は午後に胸のチューブを抜くという。いつもであれば、一旦脱気を止め一日様子を見て、肺がしぼまなければ抜管の流れなのだが、今回ここはショートカットするようだ。それだけ外科手術の信頼性が高いのだろう。なお、退院は最短でも木曜日になるとのことだった。

夕方、主治医が病室に訪れ抜管の措置を行う。麻酔なしのため涙がにじむほどの痛さであることは、過去の入院記でも毎回書いてきた。しかし、手術という大きな障壁を乗り越えた今になって考えてみると、それほど大した痛みではなかったような気がしてくる。確実に痛みのキャパシティが広がっているようだ。

右側を上にして横になると、医師は早速チューブを固定している糸を解き始めた。あれ?あんまり痛くないぞ。そうか、硬膜外麻酔だ。これは抜管も楽に済むんじゃないか。はたして結果はそのとおりであった。もちろん多少の痛みはあったものの、拍子抜けするくらい軽いものだった。ビバ硬膜外麻酔。

それよりも、問題はこのとき一緒にこの硬膜外麻酔も抜いて終了させたことだ。これまで麻酔で抑えられていた痛みが今後顕在化するのだろうか。わずらわしいチューブは一切なくなり身軽にはなったが、油断できない。

夜になり、咳と痰が出るようになった。一発咳をするだけで激烈な痛みが襲う。咳を我慢する。痰がどんどん溜まる。痰が咳を誘発する。最悪の循環じゃないか。それでも結局咳は出る。まずい、めちゃめちゃ痛くなってきた。さっさと寝よう。

しかし、当然ながら咳が止まらなければ眠れない。あげく胸から変な音が聞こえるようになった。まさか空気漏れか。抜管したばかりだから充分あり得る。不安にかられ、看護士に胸を聴診してもらうが、この時点では問題なし。もしかしたら吐き出せない痰が気管にからんで変な音をたてているのかもしれない。

クソッタレ、こんなタイミングでこんな試練が待っていたとは。もうね、山場とかいらないから。そんな演出不要ですから!つらいイベントはこれが最後になることを切に願う。


#12/2(火)

少しずつではあるが、全体的な痛みは軽減してきているのだろうか。しかし、痰と咳には昨夜から引き続き悩まされている。咳を我慢するフラストレーションというのはなかなかのものである。かなりイライラくる。とにかく咳が恐ろしいため、ダメ元でのど飴を舐めたらだいぶ楽になった。

となりの方が本日手術だそうだ。ここ数日ずっとため息を漏らしていたが、今日は朝から「はぁぁ、やだなあ、やだなあ」とぼやきが加わった。あんた腹腔鏡の手術でしょ?俺なんか思いっきりメス入れられてんだぞ。いつまでもウジウジグジグジしてるんじゃねえよ!と思ったが、まあ気持ちは分からんでもない。

同じ経験をしている者として一言励ましてあげたいと思うが、なかなか話しかけるタイミングがつかめないものだ。正午近くになり、トイレに立った際、たまたま鉢合わせたため、思い切って声をかけてみた。「今日手術なんですってね。案外大丈夫ですよ。全く痛くないといったらウソになりますけど、僕なんかほら、これだけ切っても翌日は平気で歩いたくらいですから。思いのほか硬膜外麻酔が効くんで、なんとかなりますよ。」と言うと彼は「ありがとうございます。少し安心できました。」と人懐っこい笑顔を返してくれた。

個人的な考えではあるが、術前の励ましというのは、ある程度無責任であってもいいんじゃないか。実際は、術後の痛みが激しいものであったとしても、もうその場にきたら逃げることは出来ないのだし、観念して対峙するしかない。しかし、術前の不安な気持ちというのは、無理に対峙する必要などない。持っているだけ損なものだ。ならば、多少事実と異なっていたとしても、励ますことで気分が少しでも軽くなるならそれでいいじゃないか。「かなり痛いですよ。人によりますが。」と「意外と痛くないですよ。人によりますが。」だったら、後者を言ってあげるのが優しさというものだろう。看護婦や医師は責任が伴うから適当なことを言えないのはわかる。だからこそ、こういう無責任な励ましができるのは、特に面識もない俺のような立場の人間しかいないのだ。

夕方、レントゲンの結果を伝えられる。問題なし。昨夜の異音はやはり痰であったか。安心した。


#12/3(水)

驚くほど何もない一日。万一に備えての予備日みたいなものか。
しかしまだ咳は出るし、そのときの痛みは強い。手術麻酔時のラリンゲルマスク挿管で出来たと思われる傷がのどちんこの両サイドで口内炎に発展しているため、こいつらが刺激してさらに咳が出る。


#12/4(木)

退院。2週間という期間は正直長いとは感じなかった。すっかり入院生活に馴染んでしまい、特に不満もなかったからだろう。

荷物をまとめ、病室で会計を待つ。前回、前々回ともに1週間で8万円ほどだったので、今回は単純に2倍で16万円。これに加えて手術代がいくらかかるのか。想像もつかない。まあ、30万くらいは覚悟しておこう。

10時過ぎになり、事務のお姉さんが会計票を持ってきてくれる。34万円…。予想の範囲内ではあったがダメージは大きい。10月の初入院から総計したら50万円オーバーか。キツイ。マジキッツイ。(高額医療費控除は適用されるけどね。もちろん。)

階下の会計受付にて清算し、荷物をとりに病室へ戻る。外界の空気を満喫するため歩いてラーメン屋にでも寄ろうかと考えながら、やおらリュックを背負うと目がチカチカするほどの激痛。少し重いリュックを背負うことがこんなにも脇腹の筋肉を使うことだったなんて。しばし痛みに耐えながら立ちすくむ。こんな状態では当然他の荷物も持てない。仕方がないので、看護士さんに1階のタクシー乗り場まで荷物を運んでもらう。

普通に歩くことはなんら問題なかったのでタカをくくっていたが、まさかこういう形で自分の体の状態を目の当たりにしようとは。退院の翌日には職場復帰もできるかな、などと考えていたが、これじゃ厳しいか。数日養生したほうがよさそうだ。そしてタクシーに乗り込んだ俺は、おとなしく自宅への道筋を運転手に指示するのだった。

  • 終わり-

#オマケ
傷跡の写真を公開します。それなりにグロいので苦手な方はクリックしないようご注意を。
http://f.hatena.ne.jp/skintight/20090714023825