2017年のベストオブ日本酒

2017年も結構いろいろ飲みました。ただ、種類数としては減ってきてます。
日本酒経験値が上がるにつれて、求める味のハードルも高くなってきてるんですよね。これまでは手当たり次第というか、とにかく知らない酒に対する好奇心が勝っていたんですけど、徐々に当たりの確率が高い酒に絞って狙う方向に変わってきました。2018年はさらにこの傾向が進むでしょうね。どうでもいい酒を控えて、その分の金を多少高くても間違いない酒に投資するようになるんじゃないかしら。
 
さて、2017年に飲んだ中で好印象だったものを抜き出してみたところ、意外にもジューシー系に引っかかっていたことに気がつきました。あまりフルーティなのは敬遠しますが、ある程度ガス感があってすっきり飲める、いわゆるサイダーのような酒を求めている自分が。その手の酒はガキっぽくていいや、なんて頭では思っていたはずが、体は案外求めていたという…。
 
また、トピックとしては、濃醇系への飽きと定番晩酌系の魅力に気づいたことですかね。濃醇系、いわゆる濃くて甘酸っぱいやつはもういいかな。この系統はわりとどれもキャラクターが似てて変化に乏しいのも飽きた理由の一つです。そして定番晩酌系。スーパーでも手に入るような地味で安価な定番の加水火入れ酒にじわじわ吸い寄せられてます。インパクトはないんだけど、不思議とまた飲みたくなるっていうか。実際この手のはカス酒が大半なんだろうけど、その中から実は良酒ってのを発掘するのが、まるでレコ屋じゃなく町の古本屋とかリサイクルショップで良盤を発見するのに似ててdig魂が刺激されるんです。
 
というわけで、2017年の振り返りは「ジューシー系」「定番晩酌系」「軽熟成系」「生酛山廃」「その他」というカテゴリーでそれぞれベスト5を選出していこうと思います。コメントは基本、初出時のものを転載していますが一部加筆修正も。
 
 
■ジューシー系
甘すぎず、骨格があって酸がしっかり仕事をしている酒を選びました。この手のはヘタをすると無駄に香ったり旨みがボケたガキっぽい酒になりがちなので、ある程度タイトでシャープな雰囲気を嗅ぎ取ってチョイスするようにしてます。
なお、本当は12月に飲んだ守破離の雄町&山田錦も入れたかったですが、notitleを載せたので泣く泣く割愛。
 
野崎酒店 赤ラベル 純米吟醸 美郷錦仕込★★★
新橋の居酒屋、野崎酒店のプライベートブランド。「春霞」の栗林酒造が醸した美郷錦50%磨きの純米吟醸。立ち香は弱く、含むとシャープなアタックで甘みよりもビビッドな酸が主張。旨みはスリムながら薄っぺらさはなく凝縮感と足腰の強さがある。リリースでほのかな苦み。柑橘を思わせるジューシー美味酒。温度が上がると明らかにアタックが柔らかくなる。面白い。★3つにするか2.5にするか迷ったけど、おまけして3にします。
 
旭鳳 純米吟醸 生 泰平★★
八反錦60%、香り弱いながらも洋梨っぽさがある。軽い甘みにスムーズな旨み。多少の渋みと辛さ。アル感もあるが全体的にはよく出来ていてソツなくまとまっている。八反錦の特徴である、いい意味でのソリッドさと軽さが素敵。なんだろう、派手さはないけど不思議とまた飲みたいと思わせる何かがある。
 
刈穂 white label★★☆
ほのかに柑橘系の立ち香。白麹ってこととラベルの印象から勝手にシャープ系の酸っぱい酒を想像してたが、思っていたよりずっともっちりした甘みを持っている。そこに予想通り鮮烈な酸。旨みは控えめで、そのまま霧散するようにキレていく。アフターに残るごく軽い苦みも悪くない。後口にやや水っぽさというか物足りなさを感じるが、甘酸系の酒としては高いレベルにある。初心者にも玄人にもおすすめできる。
 
澤屋まつもと 守破離 no title★★★
これはすごい。含むと甘みは控えめでかなり強めのガス、なおかつガスの裏でまつもとにしては滑らかさすら感じる柔らかさがある。そしてガツンと強めでフルーティな酸。そのあとそれなりの旨みがやってくるものの、それを感じるのは一瞬で速攻でキレて行く。いろいろな日本酒を飲んできたが、含んでからキレまでの時間がここまで短いのは初めて。
 
開運 純米 無濾過生原酒★★☆
山田錦55%。静岡酵母らしい優しいメロン香。口当たりは非常に柔らかく滑らか。微かなガス感もあり。軽快な甘みと旨み。ジューシーな酸味がフレッシュさを演出。最高に芳醇でうまい。最後はごくわずかな苦味を伴ってスっと捌ける。なんという立体的で躍動感のある酒か。ただ、開栓から数時間後、常温近くで飲んだら今一つフレッシュ感が失われて平板な印象に。これが時間的変化によるものなのか温度的変化によるものなのか、車中だったので確かめようがなかったんだけど、恐らく温度かな?いずれにしろ開栓してすぐは間違いなく ★★★だったんだけど、この味の崩れで★が半分減りました。それでもやっぱり開運は静岡酒の最高峰だな。大好きです。
 
 
■定番晩酌系
結局のところ「飽きない」というのが最強なのかもしれない。もちろん不味いのは論外ですが、おじさんたちがこの手の地味だけどしみじみ旨い酒に落ち着いていくのはわかる。
 
都内ではスーパー御用達の銘柄なので正直ナメてたけど美味いわ。バニラリーな立ち香。含むとほんのり熟感を感じるほどほどの甘み。意外にも味幅のある旨みと比較的強めの酸の後、辛みがやってくる。食中酒としてかなり優秀。熟成もそれなりに行けそうなので試してみよう。
 
彦市 純米地元一貫造★★☆
冷酒だとあまり味の出てないありがちな田舎酒なんだけど燗つけると一気に化ける。旨みが増幅してふくよかに、なおかつこの酒本来のすっきりさも併せ持つため、いくらでも飲めてしまう。純粋に味だけなら★☆だけど、ここまで変化が著しいのは久しぶりだったため、この化けっぷりに★ひとつ追加。
 
旭菊 大地 純米26BY★★
いわゆる純米らしく燗上がりしまくるタイプ。地味で特段目立つところはないが、それでいてしっかり存在感はある、まるで昭和のホームドラマに出てくる母親のようなほっとする酒。2年熟成だが熟香はほとんどなく、優しいアタックですーっと口中に入っていく。たいていの燗酒はここで旨みの主張がくるんだが、この酒はそれが控えめでふわふわしたまま最後の酸に収束していく。ただ、決して軽いわけではない。飲み疲れしない非常にバランスのとれた純米酒。なお28BYはちょっと硬くて味が出ておらず、ここで得たような感動はなかった。ある程度熟成させてナンボの酒ですね。
 
白鷹 特別純米 伊勢神宮御料酒★★
山田錦70%。大手酒蔵で有名銘柄にもかかわらず都内ではあまりお目にかかれないが、とあるスーパーで発見。500mlで700円という安さ。さあ味はどうか。まずは若干の乳酸を感じる立ち香。含むと割と甘みは強く乳酸系の旨みも濃醇。酸の輪郭がはっきりしてるので非常に好印象。後口が少々雑だが、まあ値段考えたら十分か。ぬる燗~上燗で丸みが増し、後口の雑味も弱くなる。燗冷ましで酸が増してさらに飲みやすく。これは熟成もいけそう。
 
初孫 生酛純米27BY★★☆
常温自家熟成シリーズ。 スーパーで安売りしてたのを買って1年置いてみたけど まあ失敗しようのないスペックだよね。予想通りにまろやかなアタック、思ったより感じる甘み、ごく軽い熟味、腰の強い旨み。生酛らしい深み。燗もばっちりはまる。ただ、常温でも充分旨いので燗専用というほどでもない。なお、非熟成のものに関してもそれほど大きく印象は変わらない。ほんの少し酸や硬さがあるかな、といった程度なので特に問題なし。逆に言うと、売れ残りでも入荷したてでも品質はほぼ安定してるってことで。
 
■軽熟成系
なんだかんだ言ってほんのり熟成させた落ち着きのある酒が一番好きなんです。ちなみに熟成は熟成でも長期熟成酒はそこまで好みではありません。何かみんな同じになっちゃう気がして。面白いしたまにはいいんですが、それほど好んで飲む気はしないですね。
 
富久長 超ひやおろし吟醸 秋櫻  2年熟成(2015BY) ★★☆
軽く甘みを予感させる立ち香。含むと想像通りのライトなタッチ。このあたりは富久長 らしさか。旨みはきれいでスムーズ。エレガントにキレ。熟味も軽くあり。これ、熟成してなかったら物足りなかったんだろうな。ほどよく角が取れて旨みが育っている印象。かなり好きなタイプ。今後、この手の軽い酒の熟成をもうちょっと追及してみたい。
 
ロ万 火入れ原酒P 25BY★★☆
ロ万の「P」?全く聞いたことないな、と思ったらこの年にだけ造った、かどや酒店のPBらしい。店の冷蔵庫で4年近く寝かせていたとのこと。これもロ万独特の柔らかさ。ややもっちり感があって軽くはないが重いというわけでもない。控えめに熟成感もあり、すーっと体に馴染む。
 
伯楽星 特別純米 ひやおろし★★★
立ち香はほどよくカプロン。柔らかで上品な甘みからフレッシュ&フルーティな含み香を伴った、ふくよかな甘みに移行する。最初の含みでこれだけ立体感があるのは面白い。旨みも酸もキレイに出ている。最後は軽い苦みで締める。軽すぎず重すぎずエレガントさがある。通年の伯楽星は正直淡麗すぎて好みじゃないんだが、これはいいね。熟成の賜物。
 
天穏 無濾過生詰原酒 山廃純米 ひやおろし27BY★★
27BYをひやおろしとして2016年の秋にリリース。さらにそのまま店で半年眠っていたのを購入。都合約2年ほどの熟成になる。米は特等雄町。ほんのわずかな柑橘っぽい立ち香。含むと優しい甘みと柔らかい酸がフェードイン、若干の乳酸を伴った旨みがやってきて弱い苦味が顔を出しながらゆっくりフェードアウト。少しアルコール感あり。ひやおろし+半年寝かせのわりに熟味はないが、熟成によるまとまりは感じる。雄町らしい濃醇で豊かな味わい。
 
国権 秋あがり 28BY★★☆
2016年秋リリースのものなので都合1年くらいの熟成か。上品で儚げなんだけどそれなりに強度はある甘み、舌の奥で軽い熟味を伴ったコクと酸を感じたまま苦味に変化する。やっぱこのくらいの軽い熟成された酒が一番好きだわ。常温になると急に雑な感じになるので冷酒のほうがいい。常温を超えて40度くらいまで上げれば、これはこれでいい感じになる。ただそこまで燗上りするわけではない。
 
■生酛・山廃
近年流行の兆しがあるのでいろんな蔵が手を出してるけど、ただのゴツい酒に成り下がってるのが多くて残念。今後はこの製法ならではの酸と深みを生かしつつもキレイな酒質のものが抜けてくると思います。個人的には「乳酸」っぽさが好きなのでそこにも注目していきたいところ。
 
居谷里 山廃 純米 火入れ原酒70 27BY(緑ラベル)★★
実に濃醇でインパクト充分ながら、骨太過ぎないのでついつい杯を重ねてしまう。山廃らしい酸はそこまで明確に感じないが、全体のバランスをとる舵取り役として確かに機能している。極小レベルながら終盤に熟味が感じられ、それがこの酒の奥深さにつながっている。非常によくまとまったいい酒。
 
カネ中 家伝造り 生酛純米 23BY ★★☆
近所の酒店のバックビンテージ。平たく言うと売れ残り。いつもながら濃醇で最高。濃い目の食べ物と合わせるとさらに映える。熟成によるチョコっぽさはほとんどない。カネ中は熟成させたほうが絶対美味い。
 
開春 西田 生酛純米★★☆
山田錦。軽い熟味と生酛ならではの乳酸感。冷やでも燗でもどちらも良さを発揮できる。これは自家熟成に向いてるかも。
 
小左衛門 純米 生酛造り 備前雄町 火入れ★★
乳酸系の立ち香。アタック時点での甘みはほぼないが、乳酸系の旨みにちょうどいい感じの甘みが伴って広がる。酸もしっかりでしつこくない。27BYとあるので蔵で少し熟成させてから出荷してるのかな。とても好きなタイプ。思ったほど燗上がりはしない。むしろ燗冷ましが良い。まあ冷酒~常温で充分か。
 
弥栄鶴 山廃純米 70 27BY★★★
祝と祭り晴という珍しい米を使用。軽い熟成感のある香りに優しい甘さと、ともすれば菩提酛にも通じる乳酸(ヨーグルト)っぽさが特徴。口当たりもまろやか、どちらかといえば濃いが濃醇というほどではなく飲み疲れしない。とにかくとても好きなタイプ。旨みに関して、アミノ酸系の旨みがまずやってきて、その後から酸が広がりを抑えにかぶせに来るパターンが多いけど、これは旨みと酸が同じタイミングで一つの味わいとして混然となったものがやってくる感じ。熟成しているのは確かにわかるが、いわゆる熟味が分離して存在するのではなく、全体をまろやかにまとめあげるという効果としての熟成感を感じることができる。で、当然ながら燗映えしそうだがどうか。うむ、温度が上がるにつれて甘みや幅が広がる反面、酸が弱くなって少し締まりがなくなる。個人的にこの酒の「酸」に惹かれているわけで、それがなくなるのはあまり好ましくない。というわけで25-30℃くらいがふくよかさと酸のバランスがとれてちょうどいいな。
しかし後日ふとこの酒のことを思い出すと、またすごく飲みたくなる。なんなんだろうこの中毒性は。
 
■その他
最後、今回のカテゴリには当てはまらなかったけど印象に残ったものを。
 
三千櫻 地酒SP 直汲 生(普通酒★★
初日は冷酒が一番いい。常温以上だと鼻に抜けるアルコール感がちょっと気になる。かすかな甘さが微発泡感を伴ってスムーズに入ってくるが、すぐ旨みにバトンタッチ。その旨みがそのまま増幅して再び甘みが顔を出す。最後は軽い苦みとともに捌けていく。酸は主張しないが確かに存在している。アル添によるごく薄いベールは終始感じるが、悪い方向には作用していない。二日目、初日とは全く違う酒に!液性に丸みが出て甘みが明らかに増大。含んだ時点からそこそこ強い甘さを感じるが酸がちゃんと無駄な広がりを抑える。中盤以降の流れは初日と変わらないが、全体的にまとまりが出た。初日に感じた浮いたアルコール感もあるにはるが、全体のバランスの変化によってそれほど気にならなくなってる。こりゃうまいわ。普通酒とかアル添を敬遠する人にこそぜひ飲んでほしい逸品。
 
裏鍋島 隠し酒★★☆
荒責ブレンド。一部では味が落ちたと囁かれる鍋島だが、いやいや充分うまいじゃないですか。立ち香はほとんどなく、シルキーな甘みからきれいな曲線を描いて旨みに移行、酸もしっかりで美しく着地。エンベロープも味わい自体もスタンダードな感じなんだけど、なんというか、いちいちクオリティの高さを感じる。恐らく甘みが優しく雑味がないことが上品さにつながっているためだろう。
 
播州一献 純米大吟醸 北錦★★☆
無濾過生で磨き50%。フレッシュ&フルーティ系の純米大吟醸でおおっと思える酒に出会ったのは久しぶり。 立ち香はフルーティでそこそこあるが料理の邪魔をするほどではない。含むとしなやかな甘みと強めの酸がスムーズに入ってくる。旨みもしっかり。アルコール感や苦みはなくきれいにひけていく。なんというか、どちらかといえば濃醇なんだけどバランスがすごく良くて悪いところが見つからないんだよね。もうちょい低精白だったらこのバランスがさらに濃醇に寄っちゃって崩れそうだな。良くも悪くも人懐っこくてわかりやすい。
 
自然郷 七(セブン) special ver. ★★★
通常のセブンを飲んでないのでこのspecial ver. と具体的に何がどう違うのかイマイチわからないが、他ブログの通常セブンの感想を見る限りでは、やはり若干異なる味のようだ。こちらはとにかく柔らかいアタックが特徴的。まるで引っかかりがなく、スムーズに口中に滑り込んで、優しい甘みと旨みがブワっと広がる。この広がり方の幅がすごい。甘みの性質は村祐にも似た上品でシンプルなもの。酸は弱めだが、ごくわずかな苦みがキレにつながっている。
 
風が吹く<金>山廃 純米吟醸 生酒うすにごり(中取り)★★
この酒はとにかく酸の存在を感じさせないのが面白い。酸度自体は1.7なので普通だが、舌に感じるのはツルっとした甘みと旨みで山廃にありがちな酸はほぼわからない。だからといってボケてるわけではなくちゃんと立体的な構造はあるし、それなりに輪郭もわかる(この辺に酸度1.7の意味が隠れているのか)。明らかにモダン山廃の一つの方向性を指し示している。