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やし酒飲み / エイモス・チュツオーラ

 

やし酒飲み (岩波文庫)

やし酒飲み (岩波文庫)

 

 

以前より興味のあったアフリカ文学「やし酒飲み /エイモス・チュツオーラ著」を読んだ。神話的世界観の中で奇想天外、荒唐無稽、支離滅裂な冒険譚が、独特の語り口で淡々と語られる。ここには何の示唆も含蓄も心理描写もない。そもそもそういった深みを求める類の読み物ではないのだが。

一般的には極めて高い評価を得ている小説だが、果たしてこれが文学作品として真っ当に評価できるのか。自由で荒唐無稽なものを面白がる気持ちはわかる。普段の生活がキッチリしていればいるほど、そう感じるのかもしれない。ただ、私にとっては小学生の妄想にしか思えなかった。

確かに現代の西欧文化圏で生活する大人からは出てこないだろう自由奔放な発想は面白い。面白いが、この程度の想像力は子どもなら大体備わっている。それがアフリカ的な価値観を土台にして改めて表現されたにすぎないのではないか。今の私にはこれを深読みすることも、評価すべきポイントを見出すこともできなかった。

登場するグロテスクなクリーチャーや無茶苦茶な理屈は変態的かつ魅力的ではあるが、プロットや心理描写次第でもっと突き抜けられるはずだ。これじゃ物足りない。もっと俺の頭の中をひっかきまわしてくれ!要するに、ただただ純粋に稚拙なのだ。技巧を持った人間があえて既存の完成したものに挑戦したり、壊したりするのとはわけが違う。ピカソやサン・ラは後者で、チュツオーラは前者だ。(どちらが上ということではない。それぞれに良さはある。)純朴であることは素晴らしい。しかし、それ以上の何かがなければ個人的には評価に値しない。純朴さの下に重なる複層的な構造が必要なのである。