読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

再入院記1

入院記

引き続き再入院記を。長いので二つに分けます。

      • -

再入院記

実は気胸が再発しまして、7日の夜から再び入院をしてしまいました。なんという不運。しかし、今回はイーモバイルでネットに接続できるので、いろんな意味で楽だったりします。

そんなわけで、恒例(にしたくねー!)の入院記を。


#初日

3日ほど前から予兆はあった。前かがみになると胸部に違和感。悪い予感はしたが特に痛みもないし、まさかな…と思っていた。しかし悪い予感というものは当たるようになっている。世の中はそういうふうにできている。だから俺は救急外来へ入院グッズ一式をもって向かったのだった。22時過ぎに病院へ到着、書類記入などを済ませたあと40分ほど待たされようやく医師登場。そして診察の結果は言うまでもなくクロ。あれからたった一ヶ月で再びこの入院記をかけると思うと心が躍るぜ。クソったれ。

さあ、気胸と決まれば最初にやることは決まっている。胸腔へのトロッカー(金属の管)挿入だ。緊張しているのだろうか、視界が若干狭まり、不安がよぎる。前回はほとんど術前に恐怖を感じなかった。それはこの先何が起こるのか知らなかったからだろう。経験はさまざまな引き出しを増やす。知らぬが仏とはこのことか。

上半身裸になり、寝台に横たわる。幸い、先生も前回と同じ人だし手順に差はない。麻酔をして、メスで穴をあけ、トロッカーを挿入するだけのことだ。それでもやはり今回は前回のような余裕を感じない。術後の激しい咳き込みや低血圧症状を想像するだけで憂鬱になる。

俺は術式から気をそらすことにした。ミュージシャンらしく頭の中で音楽など奏でてみようか。しかし、そこで頭に浮かぶフレーズは「ちんぽっぽーちんぽこちんちん、ちんぽっぽー」とか「うんこもりもり、もーりもりもり、ぼーくーら元気な子」(詞・曲:Ginger does'em all)のようなものばかり。このときほど自分の才能を誇らしく思えたことはない。

そうこうしているうちに処置は終了した。しかし、やけに痛い。前のときもこんなに痛かったっけ?いや、少なくとも直後は麻酔が効いてたし痛み自体はそれほどなかったはず。ただ、痛い痛いとアピールしたところで「そういうものですよ」の一言で済まされることは明白だ。そのまま歯を食いしばって車椅子に移り、レントゲンを撮ったあと、病棟へ移動。

病室は何の因果か前回と同じ部屋。時間はちょうど24時。とっくに消灯した病室では車椅子の車輪が回る音でさえ大きく響く。バタバタとした時間はすぐに過ぎ去り、一人になった俺はようやくベッドに横たわると深く息をついて天井を見つめた。こうなってしまったものは仕方がない。自分の不運を呪っても何も変わらない。しかし、仕事や家族に大きな迷惑をかけてしまうことを思うと心が痛む。トロッカーが刺さった右胸もやたら痛いが、心の痛みのほうがよほど大きかった。

まあ、俺におセンチなのは似合わない。疲れているし、こういうときは眠るに限る。
しかし、眠ろうにも半端じゃない痛みが襲う。前回も当夜は相当痛かったが、ここまでだっただろうか。とりあえず痛み止めは遠慮なく要請すべしということは学んでいたため、早速ナースコールを押す。座薬のボルタレンが処方されるのかしら、ドキドキ、なんて思っていたら今回ははじめて試す点滴型の痛み止め。これは効きが早いが、その分持続性がないという。しかしいつまでたっても効かない。痛みがひかない。結局もう一本処方してもらうも、ほとんど効果は感じられず。隣のおっさんの酷いいびきもあいまって、結局朝までほとんど眠れなかった。入院生活に耳栓は必須である。


#2日目 土曜日

2時間くらいは寝れたのだろうか。相変わらず痛みが強い。明らかに前回よりもひどい。朝の回診時に担当医に訴えてみたところ、レントゲンを見る限りどうもトロッカーが深く挿入されすぎているようだと。おい…。

そんなわけで、午前中にトロッカーを少し抜くことになった。なんだか納得が行かないが今よりマシになるなら仕方ない。そのうちに医師が来ると、俺は全てを諦めてベッドに横たわった。傷を保護しているテープを剥がされる。いてえ。麻酔をブスリブスリと刺す。いてえ。だがそのうちに痛みは消え、糸をほどき何か押されるような感覚。この感覚は何度やっても好きにはなれない。一通りの処置が終わった後、深呼吸を求められる。うん、だいぶ楽になった。しかしずいぶんと損をした気分だった。

この後は寝たり起きたり、必要各所へ連絡したり携帯をいじったりしてるうちに夜。時間のたつのがやたら早い。思うに携帯メールを打ってるうちにかなり時間を浪費しているような気がする。携帯音痴なので文字入力に慣れないのだ。しかしいずれにしても、存在感はかなり大きい。あれだけ嫌っていた携帯だが、少なくとも入院生活においては必需品であると思えるようになった。

就寝時、だいぶマシになったとはいえ、まだ痛みはある。鎮痛剤が切れると途端に痛み始める。このため寝る前にボルタレンの座薬をもらう。横を向くのも痛い状態なのだが、看護師さんは冷たく「自分で出来るよね」と手渡して去っていった。俺のアナルドリームはあっさりと崩壊…いやいや、じゃなくて、体かがめるだけで本当に痛いんだけど!でもまあ、そこで駄々をこねて「待ってー!お願い入れて!」なんて言ったらそれこそ変態認定されると思ったので我慢した。痛みに耐えながらの挿入だったため、必然的に動きはゆっくりになり、溶けやすい座薬は俺の指をベタベタにした。


#3日目 日曜日

朝6時に痛みで目が覚めた。とはいえ、昨夜に比べれば格段に楽だ。やはり最初の処置がミスっていたということか。

朝食後トイレに立つと、俺と同じ呪われたマシンを引きずる若い男性がいる。思い切って話しかける。案の定、彼も気胸で俺よりも一日前に入院したらしい。そしてよくよく話を聞くと同室のお隣さんではないか。初日のいびきの主はこいつか。まあ気さくな若者だったので不問としよう。彼のことはE君と呼ぶことにする。

その後、特に何をしていたわけでもないのだが、気がつくとすでに昼。

午後、木曜の夜以来入ってなかった風呂に入る。少しでも体に力を入れると痛みが走るため、老人のようにそろりそろりと脱衣する。結局、頭と股間を洗っただけで30分もかかってしまった。

風呂から戻ると、病室のカーテン越しから女性の声。どうやらE君のところに彼女がお見舞いに来ているようだ。きゃっきゃうふふ。まあ別に不快というほどのことはない。楽しそうで何よりだ。ただ、急に女性の声が聞こえなくなり、ときどき「ギュポ」という音が聞こえたのだが、あれはなんだったんだろうか。コーラか!そうだ、コーラを飲んでいたに違いない。若いって素晴らしいですね。

夕方、前回の入院記でも登場したニートの友人が見舞いに来てくれる。イーモバイルの携帯をPCでデバイス認識させるためのドライバディスクを忘れたので、うちに寄って持ってきてもらったのだ。これでようやくネット接続ができるようになった。まさにイーモバさまさまである。

夜はそのままネット三昧。あっという間に消灯の22時を迎えた。さあ、明日から書くことがなくなるぞー。


#4日目 月曜日

日増しに痛みは軽減されてきている。7時に検温などを済ませ、8時に朝食。前日の18時に夕食をとってから、翌朝8時まで何も食わないというのは実に腹が減る。しかしこれが本来の健康的な生活なんだろう。空腹で目が覚めるというのは久しく忘れていた感覚だ。とはいえ、やはり6時に起床してからの2時間は、空腹感がかなりキツイのであらかじめパンなどを用意しておくことにする。

午前中にCTとレントゲンの検査を行い、終了後、その足で売店へ向かいパンやお菓子などを購入。

午後、カーテン越しに、にぎやかな声が聞こえる。E君への見舞い客のようだ。ふと、聞き捨てならない単語が俺の耳に飛び込んだ。「お土産はコージーコーナーのケーキだぞ」…なに…ケーキ…だと?昨日までの彼への好意的なイメージが覆りそうなほど俺は動揺した。ケーキ、それは人を惑わす悪魔の食べ物。知ってのとおり、世界では今もケーキを巡る戦争があとを絶たない。俺もケーキ食いたい!食いたい!クソー!ぶっ殺してやる!と思っていたら、怨念が伝わったのか、E君が「プリンどうすか?」とわざわざくれた。ケーキじゃなかったけど超いいやつ。やっぱお前好き。

その後は病室でPCを起動し、会社に接続するための設定を行う。夕方設定が完了し、仕事を手伝う。まったく便利な世の中になったものだ。普段の6割くらいの仕事は居ながらにしてこなせるのだから。以前から在宅勤務に憧れを抱いていたが、やってみるとそれなりの緊張感もあり、思っていたほど甘いものではなかった。もちろん、会社にいるよりは楽だが。

夜になって担当医が説明に訪れる。CTの結果、患部はやはり胸部の内側にあるらしく、胸腔鏡での手術はできないとのこと。つまり手術をするなら開胸しなければならず、負担が増す(ていうか怖い)。その代わり再発リスクは格段に下がる。もちろん、前回と同じく自然治癒も有効な選択肢だし、開胸はその負担ゆえ積極的に勧めるものでもない。

入院期間のことを考慮すると、手術の場合は最短で木曜に行い、そこから1週間は入院。自然治癒の場合、順調にいけば土曜か日曜には退院できそう。仕事のこともあるし、なんといっても今回は17日の月曜日にThe Whoの来日公演があるのだ。これを見に行けないなんて冗談じゃない。そんなわけで、俺は当然のごとく自然治癒を選択した。こんなにも早く再発した実績がある以上、今後の不安はとてつもなく大きいが、今はとにかくタイミングが悪すぎる。