「Signs」制作記#6 マスタリング

いよいよ最終回!まだ聴いてない人も、もう何回も聴いたって人も、聴きながら読んでください。

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今回のマスタリングで最も気を遣ったのは音圧です。

 

今のようなストリーミング全盛になる前は音圧戦争なんて言って、いかにデカい音量感を出すかで競っていた部分があります。確かに音がデカいほどインパクトがあって良い音に感じられるんですよね。

 

でも、昨今は音を突っ込みすぎる(音圧を上げ過ぎる)とプラットフォーム側でリミッターがかかって音量を下げられちゃうんです。それやられると、原音からニュアンスが変わってしまうので、なるべく避けたいところ。

 

LUFSという音量感の指標があって、通常は-14あたりを目指すんですが、数値上はしっかりそこに合わせてるのに、一般的な他曲と聴き比べると、やっぱり自分のは音圧が低くて物足りないんですよ。この辺はエンジニアの腕なんでしょうね。難しいもんです。

 

まあ、プロのエンジニアが手がけた音と比べて劣るのは仕方ない。とはいえ、自分の現段階のスキルではここが限界!というところまで追い込んでBettyさんに提出しました。

 

前回はここから鬼のようなダメ出しの嵐だったから戦々恐々としてたんですが、「最高!問題なし」と拍子抜けするお返事。え?ウソでしょ?一発OK?逆に怖い。

 

前回の反省としてエンジニアリングについて「基本、こちらに任せてほしい」とお願いしてたから、その辺を汲んでくれたのかもしれません。いずれにしろ、ここはびっくりするくらいスムーズでした。

 

というわけで、ようやく完パケ

 

実際SpotifyYouTubeにアップされたものを聴くと、思ってたより全然音圧感があって意外でした。他曲と比べてもそれほど遜色ないし。

 

いや、むしろ他曲より低音がゴツくなってないか?なにこれ?ローカル環境で聴くアップ前のファイルより、配信のほうが音がゴツくなるってどういうことだろうか。まあいいや、次回からはそのへんも加味して作り込むことにします。

 

とにかく、今回もいろいろと勉強になりました。

 

次作は現在構想中です。大まかな方向は決まったので、これからいくつかモチーフを作って絞り込んでいきます。まだどうなるか全くわかりませんが、夏くらいにリリースできたらいいなあ。お楽しみに!

 

(了)

 

「Signs」制作記#5 ミキシング

「Signs」絶賛配信中です!

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前作の制作記でも書きましたが、正直に言うと、私はミックスとマスタリングに関しては素人に剛毛が生えたレベルです。

 

https://gingerdoesemall.hatenablog.com/entry/2023/01/19/121356

 

自作曲と知人の作品をいくつか手がけたことがある程度で、当然専門でやってるプロと比べると経験値もクオリティもかなり差があります。

 

ただ、それは見方を変えると「伸びしろがある」ということでもあります。なんてポジティブ!

 

実際、前回に比べると新たなプラグインをいくつか導入したりもして、明らかにレベルアップしたなあと自分でも感じます。

 

一番大切なヴォーカルトラックに関しては、これまでローエンドをバッサリカットしていたのをやめました。セオリーとしてはローエンドを切ることですっきりと抜けが良くなるんです。ただ、Bettyさんの声質だともともとその帯域が弱いので軽くなりすぎてしまう。芯と音圧がなくなっちゃうんですよ。

 

これに気づいたおかげで、ずいぶんヴォーカルのまとまりが良くなったと思います。

 

今回、唯一意見が衝突したのは(といっても大したことないけど)、コーラスの音量バランス。Bettyさんはコーラスをかなり大きめにミックスして広がりを出したかったようですが、自分としては真逆の意見で、むしろ小さくして目立たせたくなかったんです。

 

コーラスを大きくすると、ソリッド感が失われるんですね。今回の曲はある種ロックでもあるし、ふわっと広がる柔らかい雰囲気は絶対に違う。ということで、ここは強弁して無理やり納得してもらいました。

 

リードヴォーカルの音作りについても同じ考えで、軽く歪みを加え、ほどよくザラついた質感を目指してます。

 

それからベーストラック。録音段階でも散々苦労しましたが、音作りでも納得いくバランスがなかなか見つからず苦労しました。音圧を上げようとすると抜けが悪くなり、抜けを良くしようとすると軽くなる。

 

最初はアンプシミュレーターや調整のためのエフェクトを6個くらい使ってたんですが、完全に行き詰まりました。そこで、思い切って一旦全部リセット、コンプとEQの最低限のシンプルなセッティングにして調整をやり直したらようやく望む音に近くなりました。結局シンプル・イズ・ベストってことか。しかしベースの音作りがこんなに難しいとは…

 

あ、そうそう、時系列で言ったらもっとだいぶ前の話になるんですが、イントロのこと書き忘れてた。デモ時点でのイントロはクラヴィとリズムボックスのみで、ローパスフィルターをかけてこもった音から徐々に開いていくようなアレンジにしてたんです。

 

ただ、ここはBettyさんから「具体音を入れて、シネマティックで情景が浮かぶようなものにしてほしい」と要望が。それは面白い!とノリノリで作りました。不穏な効果音とともに、虐待野郎がドアを乱暴にノックして部屋に入ってくる様を表現。そしてイントロの最後での撃鉄の音は……リスナーの解釈に任せます。

 

そんなこんなで、どうにか2mixを完成させました。次回はいよいよラスト、マスタリングへ。(続く)

 

「Sings」制作記#4 ミキシング

絶賛配信中です!

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前作の制作記でも書きましたが、正直に言うと、私はミックスとマスタリングに関しては素人に剛毛が生えたレベルです。

 

https://gingerdoesemall.hatenablog.com/entry/2023/01/19/121356

 

自作曲と知人の作品をいくつか手がけたことがある程度で、当然専門でやってるプロと比べると経験値もクオリティもかなり差があります。

 

ただ、それは見方を変えると「伸びしろがある」ということでもあります。なんてポジティブ!

 

実際、前回に比べると新たなプラグインをいくつか導入したりもして、明らかにレベルアップしたなあと自分でも感じます。

 

一番大切なヴォーカルトラックに関しては、これまでローエンドをバッサリカットしていたのをやめました。セオリーとしてはローエンドを切ることですっきりと抜けが良くなるんです。ただ、Bettyさんの声質だともともとその帯域が弱いので軽くなりすぎてしまう。芯と音圧がなくなっちゃうんですよ。

 

これに気づいたおかげで、ずいぶんヴォーカルのまとまりが良くなったと思います。

 

今回、唯一意見が衝突したのは(といっても大したことないけど)、コーラスの音量バランス。Bettyさんはコーラスをかなり大きめにミックスして広がりを出したかったようですが、自分としては真逆の意見で、むしろ小さくして目立たせたくなかったんです。

 

コーラスを大きくすると、ソリッド感が失われるんですね。今回の曲はある種ロックでもあるし、ふわっと広がる柔らかい雰囲気は絶対に違う。ということで、ここは強弁して無理やり納得してもらいました。

 

リードヴォーカルの音作りについても同じ考えで、軽く歪みを加え、ほどよくザラついた質感を目指してます。

 

それからベーストラック。録音段階でも散々苦労しましたが、音作りでも納得いくバランスがなかなか見つからず苦労しました。音圧を上げようとすると抜けが悪くなり、抜けを良くしようとすると軽くなる。

 

最初はアンプシミュレーターや調整のためのエフェクトを6個くらい使ってたんですが、完全に行き詰まりました。そこで、思い切って一旦全部リセット、コンプとEQの最低限のシンプルなセッティングにして調整をやり直したらようやく望む音に近くなりました。結局シンプル・イズ・ベストってことか。しかしベースの音作りがこんなに難しいとは…

 

あ、そうそう、時系列で言ったらもっとだいぶ前の話になるんですが、イントロのこと書き忘れてた。デモ時点でのイントロはクラヴィとリズムボックスのみで、ローパスフィルターをかけてこもった音から徐々に開いていくようなアレンジにしてたんです。

 

ただ、ここはBettyさんから「具体音を入れて、シネマティックで情景が浮かぶようなものにしてほしい」と要望が。それは面白い!とノリノリで作りました。不穏な効果音とともに、虐待野郎がドアを乱暴にノックして部屋に入ってくる様を表現。そしてイントロの最後での撃鉄の音は……リスナーの解釈に任せます。

 

そんなこんなで、どうにか2mixを完成させました。次回はいよいよラスト、マスタリングへ。(続く)

 

「Sings」制作記#4 歌録り

各種プラットフォームで配信開始されました!よりどりみどりです。

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さて、歌に関しては、Bettyさんの旦那さんの意見も伺いつつ進めていきました。実は旦那さんには随所でディレクションやらアドバイスやらで助けていただいてます。

 

私が手を入れる前の最初のデモは、比較的ストレートなチキチキの16ビートで、Bettyさんはその上でわりと伸びやかなニュアンスで歌ってらしたんですね。

 

私がアレンジしたバージョンのデモではその伸びやかな歌のトラックをそのまま使いました。

 

その結果、なんつうか、ファンキーなんだけど、どこか異質なものが上手く組み合ったようないい感じのグルーヴが意図せず出てたんです。意図せずにね。

 

そう、私は自分で作っておきながら、そこが肝ってことがよく分かっておらず、最初はむしろ逆に音価を短くして歯切れのいいヴォーカルを求めたんです。だってファンクって通常はそういうもんだから。

 

ただ、これがしっくりこない。決して悪くはないんですが、ベースの時にも書いた「うねるグルーヴ」が生まれない。おっかしいな…なんでデモのあの感じにならないんだろう…と自分でも原因が分からないままBettyさんには「なんか違うからやり直し」みたいなゆるふわな指示で録り直しをさせました。鬼か。

 

まあ、それとは別問題でBettyさん自身も私のアレンジしたトラックのBPMになかなか慣れることができなかったようです。当初は感情やグルーヴを乗せるところまで行けず、歌詞とメロディを追うことでいっぱいいっぱいでした。

 

そうそう、デモからはBPMを10以上アップしてるんです。トラック作る側としては、BPM10の差なんて大したことないだろうと思ってたんですが、実際歌う方からしたらかなり大変だったみたいですね。しょっちゅう難しい難しいって嘆いてましたw すまぬw

 

で、何回目かで旦那さんが、冒頭で書いた「異質なものが重なることで生まれるグルーヴ」について指摘してくれたんですね。そこで、私のトラックに合わせて歌うんじゃなく、あえて私が手を入れる前の最初のデモをバックトラックにして伸びやかに歌ったらどうかと案が出たんです。

 

それは面白いかも!と試しにやってもらったらこれがハマった。円を描くようなグルーヴを意識して歌ってもらったのも良かったですね。

 

このころには何回も歌い込んだ成果もあって、感情もかなり乗るようになっていい意味での「粗さ」が出てきたんですよ。Bettyさんの歌って、良くも悪くもソフトでスムーズなんですよね。でも、今回の曲は歌詞が歌詞だし、トラックもアグレッシブなので、従来のナチュラルで優しい感じではバランスが取れない。なので「ぶち殺してやる!」って気持ちで歌ってくれとお願いしました。このへんはBettyさんとしても新機軸だったみたいですね。

 

歌詞の世界観についてはBettyさん本人による解説をぜひお読みください。曲への理解が深まるかと。

 

https://note.com/betty_kitty/n/nd377514012a9

 

https://note.com/betty_kitty/n/nd323e3ea5f35



次回はミックスについて。(続く)

「Signs」制作記#3 ベース録り

Spotifyでも配信開始されました!

open.spotify.com

 

 

今回、ベースに関してはぜひとも生ベースを入れたい!というBettyさんたっての希望により、元Q.A.S.B.のKobさんこと古宮さんに客演をお願いしました。

 

実はこのベースでめちゃくちゃ悩んだんですよ。

 

もともとのデモもKobさんが弾いていたのですが、残っていたパラデータはmp3だったのでさすがにそのまま使うわけにはいかず、弾き直しをお願いしたんですね。

 

録音の場には同席することができなかったため、基本的におまかせの形をとりました。

 

こちらとしては、極力デモと同じグルーヴで、とはいえ全く同じは難しいでしょうからフレージングはプレイヤーの解釈と創造性に期待するというスタイルでお願いしました。

 

ただ、リファレンスとして亀田某氏が弾いてる某京事変の某曲を私が提示してしまったもんだから混乱が生じます。

 

リファレンス曲のベースはぐねぐねとうねるノリで、自分としてはそこに着目してほしかったんですが、うまく伝わらず。やや歪んだロッキンなサウンドにファンキーなフレーズなので、どうもそっちに意識が行ってしまったようで、バキバキのファンクベースが届いたのです。うわー、全然イメージと違う!頭を抱えました。

 

Kobさんの名誉のために言っておきますが、フレーズやプレイ自体はめっちゃかっこいいんですよ。でも自分のイメージとは合わない。これはもう完全にコミュニケーション不足によるプロデューサーの落ち度です。

 

こちらが考えていることは、何も言わずとも相手に理解してもらえるという錯覚。長年一緒に活動している人ならともかく、Kobさんとは一度も会ったこともなく、最低限の条件だけ伝えて、ディレクションもないまま、ほれ俺のイメージ通りに弾け、なんて横暴極まりないですよね。

 

一応は録ってもらった音源で何とかしようと編集を駆使してベースのトラックを作ってみましたが、やっぱり違う。この時点でのKobさんのプレイは音価が短くてファンキーなんですが、こちらは音を伸ばす感じのノリをイメージしていたものだから、どうしても違和感が残る。長いものを短くすることはできますが、短いものを長くするのは難しいんです。

 

一旦そのバージョンもBettyさんに聞いてもらいましたが、やはりしっくりこない様子。

 

仕方ないのでイメージと違うことを正直にKobさんに伝えて録り直しをすることになりました。

 

今度は、事細かく要望をメモにして事前にお伝えしました。というか、自分の頭にあったのはあくまで最初のデモでのプレイそのまんまであり、基本的に改変は求めていないことに、ようやくこの時点で気が付いたのです(遅いわ)。

 

その結果、ようやくこちらのイメージに合致するテイクをいただくことができました。Kobさんには無用な手間を取らせてしまい申し訳なかったです。

 

さあ次回はいよいよ本丸の歌について。

 

「Signs」制作記#2 アレンジあれこれ

制作記の続きです。

bettykitty717.bandcamp.com

最初にもらったデモの時点で歌と歌詞は8割方完成していたため、私の最初の作業はアレンジを考え、ざっくりトラックを作るところから。

 

要望いただいたコンセプトは「ファンク」。私が最も得意とするところですね。なるほど、最初のデモもそんな感じの雰囲気。クラヴィネットとベースのうねるグルーヴがかっこいいので、アレンジとしてここはそのまま採用することにしました。

 

ただし、クラヴィのパラデータはないとのことで、一から打ち込みし直し。クラヴィの打ち込みなんて初めてだよーといろんなサイトを見たりして、なんとかそれっぽいフレーズを作成。

 

なぜかベースだけはパラデータがあったため、そのままはめ込みます。

 

ドラムは当初四つ打ちで考えてましたが、なんだかツマラナイ。で、Moombahton (ムーンバートン) のリズムにしてみたらこれがハマった。ドッッタドッタ、ドッッタドッタってやつですね。後ノリ感が強くなってうねりが表現しやすくなりました。

 

平歌部分の音数の少ないリフはサンプリングです。サビとの対比を明確にしたかったので、極力スカスカにしてやろうと、あんなアレンジに。

 

Gingerらしさも盛り込んでほしいってことだったので、遠慮なく間奏部分で遊びました。まずストリングスのフレーズのループになるところですね。あれ、あえてループの最後で音を切ってスムーズに繋がないようにしてます。雑にサンプリングを並べたような雰囲気を出したかったんです。

 

それから、後半の声のカットアップも。あのあたりはもう手癖でどうにでもなる大得意なところ。そこにKobさんのファンキーなベースが乗っかればもう完璧。ここはいかにも俺らしさが出てるパートです。このパートだけ抽出してリミックス作ってもいいかな、なんてことも思ったりして。

 

ストリングスのぶつ切りパートの直前でスクラッチが入ってますが、あそこはちょっと迷いました。スクラッチって下手するととてつもなくダサくなるので。今回はどっちかというとカットアップ的な使い方にして何とかなった(のか?)。

 

ま、そんなこんなでデモをちゃちゃっと作成、Bettyさんに聴かせたところ、大層気に入っていただきました。

 

ここまでは順調だったんですよ、ここまでは… (続く)

「Signs」制作記#1 最終決定権について

相変わらずシンガーのBettyさんとコラボをやってるわけですが

1月にリリースした「Do you remember?」に続いて第二弾が完成しました!

 

タイトルは「Signs」。動きを束縛されるような辛いこと(病気とか虐待とかモラハラとか)から抜け出せずにいる人へのエールというか、檻をぶっ壊せ!的なメッセージソングになっています。この歌詞ができた経緯や詳細はBettyさんのブログで解説されていますので、ぜひご一読を。

https://note.com/betty_kitty/n/nd377514012a9

 

現在bandcampにて先行配信中ですが、その他プラットフォームでは来週初め、5/22~5/24頃に配信開始予定です。

 

bettykitty717.bandcamp.com

 

さてさて、今回も歌と歌詞とメインメロディ以外、つまりアレンジ、トラックメイク、エンジニアリング(ミックス&マスタリング)を私が担当しました。

 

正直、前回に比べれば意見がぶつかることは少なく、いろいろなことがスムーズに進んだように思います。やはり二回目だと互いの考えてることも分かってくるので、コミュニケーションが円滑になりますね。

 

とはいえ、何もなかったわけではなく、今回はむしろこっちがダメ出しをすることが多かったかな。

 

今回の曲を作り始める際に「最終決定権はどちらにあるのか」をはっきり決めておいたんです。

 

意見が合わずにぶつかった時、もちろん話し合いをして互いが納得する形で決着できればそれに越したことはないけれど、どちらも譲らないということも充分あり得ます。そうなったときに、この決め事があれば、無用な禍根を残さずに先に進むことができるのです。

 

で、今回は私がプロデューサーとして最終的な決定権を有するということで進行しました。必然的にこちら主導で音を作っていくことになるわけですが、その結果、私からのダメ出しが増えたという。イコール、私のわがままをいくらか通させてもらったってことでもあります(笑)

 

Bettyさんには何度も歌い直しを要求したにもかかわらず、嫌な顔一つせず受けていただいたのは感謝です(やりとりはチャットなので顔見えないけど)。

 

次回は時系列を追って制作の歩みを振り返ってみます。